メッセージ


GPS(IRPS)にゆかりのある方々からメッセージをいただきました。

◆ GPS Dean Peter Cowhey
 株式会社ブロードバンドタワー代表取締役兼社長CEO 藤原 洋
◆ DDI(KDDI)創業者 イーアクセス株式会社/イーモバイル株式会社 創業者・元会長 千本倖生氏
◆ 日本銀行前総裁 白川方明氏
◆ スタンフォード大学教授 星岳雄氏
◆ 三菱総合研究所 取締役社長 大森京太氏






「UC San Diego/GPSフェローシップ滞在を終えて ~知の集積による都市形成を体感~」


 2015年5月10日に到着して27日に帰国の途につくまで、あっという間の充実した滞在だった。IR/PSからGPS(Global Policy & Strategy)に改称した直後の滞在ということもあり、さらなる発展を指向する時期に重なった充実感があった。以下に示すように、密度の濃い時間を過ごすことができたのは、GPS研究科長のピーター・コーウェン博士、看板教授のウリケ・シェーデ博士をはじめとするGPSスタッフの献身的な努力の賜物であり、感謝の意と敬意を表させて頂きます。

 パブリック・イベントにおける私の役割は、18日夜に開催されたEvening of Art & Scienceにおける基調講演“San Diego-Japan Innovation: Common Avenues in IoT and Biotech”と、19日終日行われた5つのパネルディスカッション(共通テーマ:“New Approaches for the Promotion of Innovation”)の中の“The Internet of Things as the Next Big Thing”パネルへの登壇の2つであった。

5月18日のピアノ音楽と科学技術によるイノベーションとを一体として集う斬新な試みだったが、今後の持続可能な社会発展には、科学技術の発展と共に文化の発展が不可欠であるという見地から大いに参加者の共感を得たと思われる。音楽については、トップピアニストの山岸ルツ子氏による見事なオール・リストプログラムで会場は感動の渦に包まれた。あの感動の直後の基調講演は、非常にやり難い面があったが、日本を代表してフェローで招聘された立場上、つまらない講演はできないと思い、何故サンディエゴなのか?我々はどういう時代にいるのか?何故IoTなのか?についての自分なりの主張をしたつもりである。その後、受講された方々から、サンディエゴ~日本連携に具体的に関わりたいという声を多く聞くことができ、少し安堵している。

5月19日のパネルディスカッションでは、現在私が最も注力しているIoTの技術とビジネスにおける取り組みとサンディエゴ地域でのベンチャー企業投資を目指すIoTファンドの話をさせて頂いた。ディスカッションでは、IoT化に伴う、ビジネスチャンスの拡大と個人情報保護やセキュリティに関する政策の重要性が議論された。IoTには、技術、ビジネス、政策の様々な挑戦課題があり、今後もホットなテーマあり続けるという共通認識が深まったという印象であった。また、他の4つのパネルは、大学の在り方、バイオビジネス、政策等について深い議論がなされた。特に来日した登壇者の顔ぶれは、小宮山前東大総長、末松AMED理事長、白川前日銀総裁をはじめ非常に贅沢で、日本とサンディエゴの登壇者の発言にアピール性があり、非常に熱気を帯びた一日となった。

イベント以外の活動としては、GPSでは私の発表に基づく学生との討論会に加えて、UC San Diegoのエンジニアリングスクール、ビジネススクール、メディカルスクールをはじめ、ライフサイエンス関連研究所のスクリプス、ラホヤインスティチュート、サンフォード、クレイグベンターの世界的研究者や、地元有力企業のクアルコム社、イルミナ社等世界をリードする企業関係者との個別面談の場をGPSを中心に設定して頂き、非常に密度の濃い将来につながる議論を行うことができた。
 
 本フェローシップの滞在を通じて体感したことは、UC San Diegoの創立とクアルコム社を中心とした大学発企業が主導するワイヤレス産業の創出と、スクリプス研究所の創立とその後のライフサイエンス産業の創出が、サンディエゴという都市の発展につながっているということである。この「知の集積による都市形成」のサンディエゴ・モデルの中に日本社会の目指すべき方向性があると確信した貴重なフェローシップ滞在期間だった。

株式会社ブロードバンドタワー代表取締役兼社長CEO 藤原 洋氏 )



「San Diegoにはこれからの戦略産業拠点として極めて大きな潜在力がある」


Qualcomm社の創業者のIrwin Jacobs 博士の好意のおかげでこの4月初めから2週間にわたりUC San DiegoでのEmPacのFellowとして何十年振りかの大学のキャンパスでの生活を経験でき、感謝に堪えない思いです。

San Diegoは私が創業した会社、DDI(現KDDI)社やイーモバイル(現ソフトバンク・モバイル)社が深く共同開発にかかわったSan DiegoベースのQualcomm社やPCSI社がその本社を置いていた関係で過去20年にわたり毎年数回訪れていた町である。最近の2年ほどは訪れることがなくなっていた。今回の滞在中にキャンパスの内外で多くの教授陣、大学院生、経営者、起業家、インキュベーターなどに会い、活発に意見を交換することができ、何よりも嬉しく思った。

この間UC San DIegoやその関連研究所等の成長は実に目覚ましいものがあった。特にバイオ,ヘルスケア産業とワイアレス・インターネット産業においては特筆すべきものが多く見受けられたのは大変嬉しいことであった。ただ、米国内の位置づけはそれなりに高いものの、日本におけるSan Diegoの位置づけは北カリフォルニアのシリコンバレーと到底比肩できるものではない。位置づけを何らかの形で抜本的に引き上げない限りこれからのSan Diegoのグローバルな大きな発展は期待できないであろう。

そのために大学だけでなく、市当局、プライベートセクターが協力してSan DiegoのVisibilityを上げなければならないと思う。 例えば大きなイベントを日本の主要都市で開催するとか、Tangibleなアウトプットを定期的に出すといったことを企画すべきであろう。

いずれにしろSan Diegoにはこれからの戦略産業拠点として極めて大きな潜在力がある。

IR/PSで学んだ皆様方の貢献できることが数知れずほどあると確信します。皆様の活躍を心より期待し応援いたします。

( DDI(KDDI)創業者 イーアクセス株式会社/イーモバイル株式会社 創業者・元会長 千本倖生氏 )



「IRPSの思い出」


私は2014年2月半ばから2週間強、フェローとしてカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のSchool of International Studies and Pacific Studies(IRPS)に滞在した。毎朝、カリフォルニアの明るい陽射しの中、学生生活に戻ったような解放感を味わいながら滞在先のホテルから10分ほど歩いて、大学のオフィスに通ったことをつい昨日のことのように思い出す。

滞在中は、2回の講演、ファカルティー・メンバーとの意見交換、教室の内外での学生との交流、地域におけるIRPS支援者との懇談会をはじめ、様々なプログラムが組まれ、日々得難い経験をした。プライベートな面でも、地元の親切なバードウオッチャーの案内で、趣味のバードウオッチングを楽しんだり、サンインディゴ東部に位置するボレゴ砂漠州立公園を訪ねたり、妻と共に大いに楽しい時間を過ごした。

訪問前は、サンディエゴに関する知識はほとんどなく、恥ずかしながら、「メキシコ国境に近い軍港の町」という程度の知識しかなかった。最大の発見はサンディエゴがバイオテクノロジーのベンチャー企業の集積する活力に溢れた都市として近年大きな発展を遂げていることであった。興味があったので、この面でのサンディエゴの発展の理由を聞いたり調べたりしたが、何よりもカリフォルニアの自由な空気、恵まれた気候、大学と企業と地域コミュニティーの協力の文化等が多くの意欲に満ちた人を惹きつけていることが大きな理由のようだ。自分自身の専門分野外であるが、バイオテクノロジーの面では近隣のソーク研究所やスクリプト研究所と並んで、生化学の分野でのUCSDの研究は有名であり、この地域から多くの研究成果が生まれている。ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進先生もUCSDに学ばれ、ソーク研究所に滞在したこともある。

このように、近年のサンディエゴの発展を語る上で、UCSDの果たした役割は極めて大きい。地元の人と話していても、UCSDのことをわがことのように、誇りに思っていることが伝わってくる。私の属したSchool of International Studies and Pacific Studies(IRPS)はその名前にあるように、太平洋地域の研究・教育に力を入れている。日本人である私にとって嬉しいことは、日本に関する研究・教育に力を入れていることである。この点、近年、日本の経済的地域の相対的低下を反映して、海外での日本研究がかつてほどには活発ではなくなってきている中で、IRPSは例外的な存在のひとつであり、大変貴重である。

私が滞在中に感じたIRPSの最大の魅力は学際的な環境であった。自分の専門分野である金融政策やマクロ経済についても多くのファカルティー・メンバーと議論したが、議論の相手は、メキシコ国境に近いという土地柄を反映して移民の問題も扱っている国際経済学の専門家であったり、タイの小規模企業のファイナンスについてデータに基づいて実証研究を行っている経済学者であったり、ヘッジファンドでの運用経験のある中国経済研究者であったり、中央銀行の独立性を研究している政治経済学者であったり、イノベーションを生み出す地域のビジネス・エコロジーの研究者であったり、実に多岐に亘っていた。興味深いことに、ほかならぬ日本についても、滞在中に学ぶことも少なからずあった。日本企業の研究を永く行っているシェーデ教授からは、自分の知らなかった日本の元気な企業のことを教えてもらった。

滞在中、日本人学生とも多くの交流の機会があった。私の場合は僅か2週間強の滞在に過ぎなかったが、彼等は私以上に、UCSDやIRPSの魅力を味わうと共に、多様な国籍の教授・学生が織りなすコミュニティーの中で、改めて日本を見つめ直していると思う。時として、教室の内外で日本を正確に説明することに苦労もしていると思う。しかし、そうしたことのすべてが確実にその後の人生や活動に活かされると信じている。

滞在中にASAMESHI-KAIという、日本の紹介活動を行っている学生団体の存在も知った。妻もこの会の催した宮崎駿監督の「千と千尋の神隠しを観るイベントに参加していた。その当時の会長は日本語が上手で、原発事故後の日本の電力政策を研究している米国人学生であった。そうした活動を垣間見るにつけ、日本を理解してもらう草の根レベルの活動の重要性を改めて肌身で感じた。日本人学生がそうした活動に目を見開いて参加している姿を目にしたことも嬉しいことであった。私の拙いこの文章が掲載されるホームページも滞在時に知り合った日本人学生の依頼によるものであるが、こうした企画が生まれること自体、心強いことである。

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サンディエゴを離れて1年近くが経過したが、今年の5月にはIRPSを再び訪ねる予定である。今度は日米の企業のイノベーションをテーマとした会議に参加するためであるが、再度の訪問のもうひとつの大きな理由は、サンディエゴやIRPS自体の魅力であるように感じている。

( 日本銀行前総裁 白川方明氏 )



「UCSDのプログラムは日本に関心を持つ学生の質の面で全米最高水準」

 UCSDのIR/PSを推薦します。IR/PSは1987年に最初のクラスが入学しましたが、私は開校間もない1988年から2012年まで、そこで研究、教育、運営に携わりました。その間、現在所属するスタンフォード大学も含めて、アメリカの国際関係・公共政策の大学院プログラムを数多く見てきましたが、UCSDのプログラムは日本に関心を持つ学生の質の面で全米最高水準のプログラムだと思います。アメリカにはトップクラスの国際関係・公共政策の大学院がいくつかありますが、IR/PSはその中でも特に数量的な政策評価、政治経済分析の教育に優れていて、また唯一日本を含むアジアに焦点をあてるプログラムになっています。

ここ十数年、アメリカの大学の多くでは日本に対する関心が薄れてきていましたが、UCSDは日本に関心を持つ学生を毎年教育してきました。以前に比べれば、数ほど減りましたが、日本を研究する平均的な学生の質はむしろ高まったと思います。そういう優れた学生達と一緒に勉強することは、日本から留学する人達にとって刺激的なことですし、将来にわたる貴重なネットワークを築くことができます。IR/PSの卒業生は、いまでは世界中で活躍しています。ここ北カリフォルニアでも、また東京でも、多くのIR/PSの卒業生に会い、その活躍を目の当たりにして嬉しく思うことがよくあります。

日本では、アメリカというと均一なイメージを持たれることが多いようですが、実際はニューヨーク、ワシントンといった東海岸と、サンディエゴ、サンフランシスコといった西海岸ではかなり違いがあります。日本を含めたアジアにしっかり目を向けているのは西海岸ですし、最近のアメリカの経済成長をリードしてきたのも、シリコンバレーなどを擁した西海岸だと言えます。この意味でもUCSDで学ぶことの意味は大きいでしょう。

いまカリフォルニアを始めとする全米の各地で日本への関心と評価がまた高まりつつあります。これからの日米関係のリーダーになる人達が、日本からもUCSDやスタンフォードにやってくることを期待しています。

( スタンフォード大学教授 星岳雄氏 )



「グローバルな人生への第一歩として、IR/PSへの留学挑戦をお奨めします」


グローバルな舞台での活躍を志す日本の若人たちにUC San DiegoのIR/PSを推薦します。

私は、2012年からそのInternational Advisory Boardのメンバーを務めており、毎年2回、Board Meeting出席のためUC San Diegoを訪問することを楽しみにしています。サンディエゴが、そのロケーションや気候から快適な学生生活を保証することはいうまでもありませんが、グローバルな感性と見識を磨くという点でも、IR/PSは以下のような優位性をもっています。

第1は、国際関係・公共政策に関する教育の質、レベルの高さです。アメリカでは多くの大学がこの目的の大学院コースを設けていますが、IR/PSはトップクラスの実績と定評を確立しています。

第2に、Pacific Study、アジア・日本にフォーカスしている点が他にはない特色です。世界の中での日本の立ち位置を意識し、その進むべき方向をグローバルな視点から考えてみる機会が得られます。

第3は、多様性を体験できることです。IR-PSの学生は、国外からの留学生が過半数を占めており、出身国・地域や男女の比率などもほどよくバランスが取れています。多様な友人を得る機会です。

Board Meetingの際には、教授陣だけでなく現役の大学院生達とも親しく話す時間があり、それが出張のもう一つの楽しみにもなっていますが、明るく活発な学生が多いことにいつも感心させられます。彼ら/彼女らにしても、日本の経営者と直接話すチャンスはそう多くないからでしょうか、率直な質問が次々と発せられ、私のほうも新たな刺激と気づきを得られる場合が少なくありません。

IR/PSへの留学を通じ、日本からもそういうグローバルな学習機会に参加する人が増えることを期待します。本人の成長はもとより、世界の一員としての日本の将来のためにも、IR/PSから多くの人材が輩出し、グローバルなネットワークが築かれることは、極めて意義深いものだと思います。
IR/PSでは、卒業生の連絡網もしっかり築かれているようで、東京でのReunionの会合に招かれたこともあります。グローバルな人生への第一歩として、IR/PSへの留学挑戦を重ねてお奨めします。

( 三菱総合研究所 取締役社長 大森京太氏 )